「喪」「喪」誰かが死んだわけではありません。 心が何かを失っただけです。 何を失ったのかは自分でもわからないけど、 何かを失ったとしか思えない心の痛みが、 私を苦しめるのです。 いくつもの愛を抱きしめながら、 心とはどこまで貪欲なのでしょう。 もう重い荷物が背負える大人だと、自分でも信じていたのに。 もう他人のオモチャをほしがって泣く子どもじゃないと 私を信じていたのに。 ショーケースの中できらきらと輝く魅力的なオモチャには もう「売約済み」の張り紙がいっぱい。 私の分は、もうひとつも残っていない。 誰か私にも使わせて? トイショップは宝物がうずたかく積まれたジャングル迷路。 手を伸ばせば届くけど、猫顔の財布には100円玉がひとつきり。 買えないオモチャが落ちてくる。落ちてくる。 青ざめた顔したオモチャたちが、「私を買って」と、落ちてくる。 逃げるように走りながら、抱きしめた胸の中には、大好きなテディベア。 でも少し汚れてる。しみもついてる。毛がこすれてる。 でもこれは私のオモチャ。私の大好きなテディベア。 この子を捨てるわけにはいかないの。でももし この子がいなかったら、私は他のオモチャを抱いていたの? ・・・・・・夜が明けて、朝がくれば私はひとり。 不整に波打つ心臓を押さえて、残酷な太陽に目をしかめて 視線を落とせば、膝の上にころがった哀れなテディベア。 少ししみがついてる。洗ってあげなくちゃ。 ちぢんだりしないでね。私の大好きなテディベア。 ずっとずっと大事にするから。私はここにいるから。 ・・・・・・・・・・・・・・・・・ 自由にお金が使える、大人になった代償は 自由に失恋も、できなくなったこと。 |